読売新聞の報道によれば、京都府福知山市内にある飼育小屋で国蝶『オオムラサキ』の羽化が始まっているそうです。この飼育小屋は、福知山市アマチュア写真家の大地洋次郎さんが自宅の庭に設置したもので、2000年頃から毎年200匹以上のオオムラサキを卵から育てて自然に返しているのだそうです。今年は春先の気温が高くて幼虫の餌が豊富だったので、羽化は例年より早いそうです。

 

オオムラサキの雄は10センチくらいの青紫色に輝く羽をもっており「森の宝石」と呼ばれる日本の蝶、国蝶です。幼虫は夏から秋にかけてエノキなどの葉を食べて成長します。冬は地面に降りて、樹の根や洞の内に溜まった落ち葉の中で越冬します。春になると休眠から覚めて再び樹に登って葉を食べ、さなぎになります。そして、6月から7月頃には羽化して成虫になります。オオムラサキの成虫は、クヌギ、コナラ、クワ、ヤナギなどの樹液に集まったり、クリなどの花の蜜を吸ったりするときもあります。とても飛翔能力が高い蝶でそばに寄るとパタパタと羽ばたく音が聞こえるほどです。そのパワフルな羽ばたきで、大きな蜂や蛾を蹴散らしながら樹液に群がっていることもあります。

 

オオムラサキは、関東地方でも山梨県の北杜市や埼玉県の嵐山町などでも多く見られたのですが、雑木林が開発などで寸断されてしまう昨今の開発の中で、数が減ってきてしまいました。つまり、発酵した樹液が出ているような古木や獣糞の落ちているような雑木林を保全することがオオムラサキの保存にもつながるのだそうです。

 

オオムラサキの保存のためには適度な下草刈りや伐採などが重要になりますが、逆に清掃が行き届きすぎて林床の落ち葉を清掃してしまう公園などでは、オオムラサキは生息できない事情もあるようです。冬の間に枯葉を掃除されてしまうとオオムラサキの幼虫も気づかれずに一緒に処分されてしまうことがあるからです。

 

例えばオオムラサキを町のシンボルに掲げている埼玉県の嵐山町付近でも県が積極的に推進する工業開発と工場招致プロジェクトが進み、広い範囲で雑木林が激減しています。都市圏近郊の雑木林は、保護林や保安林として維持されにくく、工業用地や住宅用地にするために伐採されがちです。このような激変する環境下で数を減らしていく動物や昆虫たちの保護と経済のバランスをどのようにとっていくのか。難しい行政判断が迫られる課題の一つと言えるでしょう。

 

 和名:オオムラサキ

 学名:Sasakia charonda

 英名:Great purple emperor

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