温室効果ガスの排出量に関連する用語で、「スコープ3(Scope3)」という言葉が最近聞かれるようになりました。


極端な気象現象が頻発している昨今ですが、地球温暖化がその一因と考えると、温室効果ガスの排出を少しでも抑えたくなりますね。温室効果ガスの排出元は、ほとんどが大企業なのですが、その取組みの第一歩として排出量の算定や報告を正確に、かつフェアに行うことが大事になります。


「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(省エネ法)などでは、企業自身が直接的に排出した温室効果ガスの排出量を「スコープ1」(Scope1)、間接的に排出したものを「スコープ2」(Scope2)として、報告や管理を義務付けてきました。


「スコープ1」(Scope1)は、具体的には化石燃料の燃焼に伴って出る温室効果ガスや温室効果を持つ冷媒の漏出など、自社が所有する施設から直接排出される温室効果ガスを対象としています。


「スコープ2」(Scope2)は、対外的に購入した電力の発電で排出される温室効果ガスなど、自社が購入したエネルギーの製造時における排出が対象になります。


そして、「GHGプロトコル」という団体が201110月に、算定・報告の具体的な要求事項やガイダンスを示したのが「スコープ3」(Scope3)です。大企業のグループ内のバリューチェーンまで報告や算定の対象範囲(Scope)としたことで、世界の大きな関心を集めました。例えば、購入する物品の製造時に排出される温室効果ガスの排出や販売製品に伴って排出されるものについても対象になります。


scope3

近年、世界では地球温暖化の防止に真摯に取り組む企業が高く評価される傾向があります。実際、カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)のような団体による気候変動防止のための取り組みを進める企業を対象とした格付けで上位にランクされることで、優良なブランドイメージが形成され、消費者の購買意欲を向上させることもできます。そこで企業が間接的に排出するサプライチェーンでの温室効果ガス排出量を「スコープ3」(Scope3)として、製造、輸送、出張、通勤などまで管理して、対外的に開示する動きが強まってきているのです。


「スコープ3」(Scope3)が急激に社会に浸透しつつある理由は、企業が排出量のインベントリ(目録)を整えていくにあたって、正確で公正に作成できるメリットがあります。企業体のかたちに依存しない広い定義を持った「スコープ3」(Scope3)は、企業活動の実態に対して、より正確で公正だと言えます。


また、隠れた理由の一つに、広い定義を持つ「スコープ3」(Scope3)の方が排出量を将来的に削減していける余地を大きく持っていると言えます。サプライヤーや顧客と共に温室効果ガスの排出削減に国際的に取り組んでいる先進的な企業にとっては、高い削減効率を維持しながら、業務や生産の効率を高めて、取り組みの費用対効果も高めていくことができるのです。