2012年の発電量を起点にした場合、2040年には世界全体の発電電力量が約1.9倍に増加すると見られています。しかし、現在の主要なエネルギー資源となっている石油は、産油地である中近東の不安定な政情に影響されるため、埋蔵量が豊富な石炭がエネルギー資源として再び注目されています。

 

石炭を燃焼させると窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)、ばいじん(DUST)が発生します。そのため、日本が高度成長期にあった頃には大気汚染が深刻な問題となっていました。しかし、過去数十年以上にわたって排ガス処理などの環境対策技術や効率的な燃焼方法を開発したりして環境への負荷を低減する努力を行ってきた結果、日本の石炭火力発電は、世界の石炭火力から群を抜いて突出した高い技術力を身につけました。石炭燃焼の「黒い煙」が出るどころか、非常に低いレベルまで有害物質を低減した排ガスとすることができるようになったのです。窒素酸化物や硫黄酸化物の排出量は、他の先進国と比較しても一桁低くなっていると言われています。

 

一方で石炭火力発電により発生する二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスはどうでしょうか。人々の生活に一定量の電気消費が必要とした場合、発生する温室効果ガスの量を少しでも削減するためには、省エネルギーに努める他に効率的に電気を作って、化石燃料の使用量を少しでも減らすことが肝要です。

 

温室効果ガスのうち燃焼によって発生する二酸化炭素(CO2)は、同じ電気をつくる場合、天然ガスと比べると石炭は2倍近くになります。しかし、日本の石炭火力発電では蒸気タービンの圧力や温度を超臨界圧発電システム(A-USC : Advanced Ultra-Supercritical)という極限まで上昇させる方法で、非常に高い発電効率を実現します。仮定として、この日本の最高水準の発電性能を排出量の多いアメリカ、中国、インドに適用すると、日本のCO2総排出量よりも多い、約15.2t-CO2の削減ができるとの試算もあります。

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写真は、石炭火力発電所で使われている低圧タービンの羽根です。この美しさに日本の技術力を見ますか?それとも、我々の電気エネルギーを得るための資源から石炭の比率を下げていくべきでしょうか?最良のエネルギーミックスを考える時には、このような技術力も加味して評価しないとなりませんね。


 


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