アメリカの各地で発生する熱波は長期的になり、頻度も増えているとしています。それによってカリフォルニア州などの山火事は大規模化しており、失われる森林の面積も拡大しています。アメリカ東部やメキシコ湾岸では洪水が頻発しており、その原因は地球温暖化による氷河の溶解とそれによる海面の上昇、海面温度の上昇などです。
 

アメリカに関連する気候変動の指標を更新して、このように声明を発表したのはアメリカ環境保護局(EPA)のマイケル・リーガン長官です。これまでトランプ政権下で気候変動に関する情報のアップデートは先送りされてきましたが、バイデン政権に移行したことでウェブサイトでの情報の公開と更新が可能になったと言います。今回のニュースリリースでリーガン長官は、気候変動がより強まり、極端になってきていることを一層明白に示す指標を加えたとしています。

Michael Regan

 

また、次のような点を挙げて警鐘を鳴らしています。

・地球の気温について

2016年は記録上最も暖かい年であり、2020年は2番目に暖かい年であり、2010から2020年は温度計を用いた観測が始まった1880年以来、記録上、最も暖かい10年であった。

・北極の海氷について

20209月の海氷の広がりは、記録上2番目に小さかった。それは、1981年から2010年の9月の平均よりも900,000平方マイル以上小さく、テキサス州の広さの3.5倍の大きさほどの差であった。

・氷床について

1992年以来、グリーンランドと南極大陸はいずれも全体的に氷を失った。それぞれが平均して年間1,000億トン以上の氷を失い、2006年から2015年の間に観測された世界の海面上昇の約3分の1を占めている。

・米国の都市での熱波について

熱波はアメリカ全土でより頻繁に発生している。その頻度は着実に増加しており、1960年代の年間平均2回の熱波から、2010年代には年間平均6回になっている。

・アメリカの海面について

1960年から2020年にかけて、米国の海岸線の大部分、特に中部大西洋岸と湾岸地方の一部で海面が(陸地と比較して)上昇し、一部の観測所では8インチ(20.32cm)以上の上昇が記録された。

・沿岸洪水について

東海岸と湾岸地方に沿ったほとんどの場所で高潮氾濫がより頻繁になっている。

・植物成長期について

隣接する48州における(植物の)成長期の平均の長さは、20世紀の初めから2週間以上増加した。

・海洋生物の分布について

海水の温暖化に伴い、米国沿岸沖の多くの海洋生物が北に移動し、より深い海域に移動している。経済的に重要ないくつかの魚介類の間で変化が起こっている。

 

アメリカ環境保護局EPAニュースリリース

https://www.epa.gov/newsreleases/epa-relaunches-climate-indicators-website-showing-how-climate-change-impacting-peoples


アメリカの気候変動指標

https://www.epa.gov/climate-indicators

 

アメリカ環境保護局(EPA)ではこれだけの情報を持っていたにもかかわらず、気候変動の影響を過小評価し、科学者の意見を軽視してきた前政権の影響で、公表できなかったことが今回の発表で浮き彫りになりました。世界的に影響力の大きい大国で、温暖化対策にこのような空白の期間を生んでしまったことは大変残念ですね。

 

リーガン長官は元EPAの職員でノースカロライナ州の環境品質長官も務めてきました。また、バイデン政権下では、ミシガン州知事を2期務めたジェニファー・グランホルム氏がエネルギー長官に据えられています。ホワイトハウスでは、既にジョン・ケリー気候変動担当 大統領特使やジーナ・マッカーシー国家気候担当 大統領補佐官が行動を起こしていますので、これからどのような国家的アクションが取られるのか注目です。


このように大きな舵を切り出しているアメリカ政府の地球温暖化対策と政治経済の大きなうねりに、日本もついていくことができるか、少々心配ですね。