まだまだ暑い日々が続いていますが、そろそろ秋の気配を感じられる地域もあるのではないでしょうか。
秋といえば、森や林に暮らすリスたちが冬に備えて活動を始める季節です。彼らはエサの少なくなる寒い時期に備え、あちこちに穴を掘ってドングリや木の実を埋めていきます。この行動を「貯食」と呼びます。
興味深いのは、リスが埋めたドングリのすべてを回収して食べるわけではないということです。時には場所を忘れてしまい、そのまま春を迎えることもあるようです。忘れ去られたドングリは芽を出し、やがて木へと成長していきます。こうした現象は「貯食散布」「分散貯食」と呼ばれ、リスの習性が植物の世代交代を助ける仕組みになっているのです。
たとえばミズナラやクルミのように大きな種をつける木は、成熟すると親木の根元に実を落とします。そしてリスがそれらを運んで埋めることで、種は親木から離れた場所へ散布されます。さらに落ち葉の下や浅い地中に隠されることで、乾燥から守られ、春には無事に発芽できるのです。
ただし、この「貯食」の方法はリスの種類によって違いがあります。ニホンリスにはシマリスのような頬袋がないため、木の実をひとつひとつ前足で運び、比較的開けた場所に埋めます。彼らは冬眠をしないので、浅い土の中や木の枝、根元の隙間などに隠した木の実を冬の間に食べて暮らします。
ニホンリス
一方、シマリスは冬眠するため、エサを地中の巣に持ち込み、そこで蓄えます。そのため種の側からすると、より広範囲に分散してくれるニホンリスの行動の方が、生存と発芽のチャンスを高めてくれているのかも知れません。
これからやってくる実りの秋。もし森の中でクルミなど大きな実を落とす木を見つけたら、近くにニホンリスが木の実を集めて隠していないか(荒らさないように)探してみてください。意外にも木から40〜50メートルほども離れた場所で、リスたちの隠した“宝物”を見つけられるかもしれません。

